UKロックの香りを漂わせつつ、耳馴染みの良いメロディと、濃厚なバンドアンサンブルで魅了するスリーピースロックバンド「THE GREENBACK」。2020年3月1日(日)に、1stミニアルバム『Opera』をリリースする。渾身の1枚を引っ提げ、ツアーを始める彼らにインタビューを敢行。
Gt&Voの伊藤晃平が、2017年末に前身バンド「THE BEERCH」を結成。メンバーチェンジを経て、2018年末に「THE GREENBACK」へと改名した。2019年4月にはオーディションを勝ち抜き、東北最大級のロックフェス「ARABAKI ROCK FEST.19」に出演。同年7月より現体制で活動中。3人での活動を振り返りながら、これからの展望なども話してもらった。―現在の体制に至るまでの経緯を教えてください。
伊藤(Vo&Gt)「2017年末に「THE BEERCH(ザ・ビーチ)」という前身のバンドを結成して、何度かメンバーチェンジがありつつ2018年5月にベースが抜けて、少しだけ活動休止状態になりました。2018年末に、タシモが正規メンバーとして加入して、今のバンド名「THE GREENBACK」に改名した形です」
タシモ(Ba&Cho)「自分は「The LaLa(ザ・ララ)」というロックンロールバンドもやっているんですが、もっといろんな曲弾きたいと思って、自分で立候補して、メンバーになりました」
伊藤「改名してから半年くらいは4人でやっていたんですが、ドラムとリードギターが抜けて。2019年7月にジョニーが加入して、現体制になりました。ジョニーとは何度か対バンしたこともあって元々知り合いで、すごくかっこいいドラムを叩くな、という印象でした。ドラムが抜けることになって誰に声をかけるか考えた時に、ジョニーがいいな、と思ったので誘ってみました」
ジョニー(Dr)「最初に声をかけられた時は(THE GREENBACKの)「アラバキ(※)」出演が決まっていた頃だったので、戸惑いもありました。それと同時にめちゃめちゃうれしかったですね。ファンとして見てたので」
※アラバキ……東北最大級の野外音楽フェス「ARABAKI ROCK FEST.」。2019年、オーディションを勝ち上がり、「THE GREENBACK」が出演を果たした
―新体制になって、何か変化はありましたか?
伊藤「楽曲の作り方は少し変わったと思います。以前は全パートを作ってデモ音源としてメンバーに渡していたんですけど、最近は断片的なものをスタジオに持って行って、作っていくことが多いですね」
ジョニー「断片的なものと言っても、メロディを弾き語りした状態で持ってきてくれるので、スタジオに入って皆でそれに付け足していくという感じ。セッション感覚で作りながら、ライブごとに曲のクオリティを上げていくみたいな。その作業がすごく楽しいし、曲の良さにもつながっているんじゃないかと思います」
伊藤「メロディから作ることが多いんですけど、まずはメロディが良い曲にすることを大事にしています。メロディの良さは前提条件。あとは、リードギターがいないので、装飾的な音がない分、3人の楽器のアンサンブルに重きを置いているところがあって。だからこそ、スタジオで作っていくのが良いなと。実際に鳴っている音で体感できるので。3人の音をうまく絡めて、一つの音楽にしていくということは、意識してます」
タシモ「3人それぞれ聴いてきた音楽のジャンルが違うので、それがうまく作用していると思います。晃平くんがいろんなジャンルの音楽を聴いて、新しいテイスト、新しい要素を取り入れた楽曲を作ってきてくれるし、自分たちもそれをすっと受け入れられる」
伊藤「これまで作ってきた曲は、曲ごとに結構雰囲気が違うんですけど、あえてテイストを変えて作っているところはあります。同じことやってると飽きちゃうので。いろんなジャンルの要素を取り入れる、いろんな色に染まれる。後付けではありますけど、バンド名にはそんな意味も込めました」
タシモ「晃平くんが持ってきた曲に、何の文句もないんですよね。ストレスなく曲作りに打ち込めています。結果、自分たちが演奏していて楽しいっていうことが伝わる楽曲にできているんじゃないかと。レコーディングした曲を聴くとテンション上がります」
―セッションで作り上げた曲を、実際にライブで披露する時に、こだわっている点はありますか?
タシモ「ライブでの見せ方やセットリストの順番を話しながら曲作りをしているので、ステージ上で特別何かをするということはないですね。スタジオで演奏のクオリティを上げていけば、自ずとライブでの見せ方も洗練されていくと思います」
伊藤「ただ、スタジオでやっている段階でめっちゃこれ良いな、と思った楽曲でも、ライブでやってみると全然良くない、ということもある。いろいろ原因はあると思うんですけど、それも含めて、セッションで作っていくのは面白いなと感じています」
―新体制になって半年ほど経ちますが、印象に残っている出来事はありますか?
伊藤「元々知り合いだったこともあって、3人とも仲が良くて。常に良い雰囲気で活動できているので……しょうもないことなんですけど、印象に残っていると言えば3泊4日で行った東京遠征ですかね。空き時間に3人でディズニーランドに行ったんです。しかも閉園後に(笑)。ディズニーランドの入口まで行って、帰るっていうことをしました(笑)」
タシモ「あれはめちゃくちゃ楽しかったよね(笑)。あの遠征がまるっと楽しかった」
―先ほど「それぞれ聴いてきた音楽が違う」とお聞きしましたが、ぜひ皆さんの音楽のルーツ、バンドを始めたきっかけを教えていただきたいです。
タシモ「ベースを始めたきっかけは、中学の時に聴いていた「マキシマム ザ ホルモン」ですね。スラップしてみたいと思って、高校からベースを始めて。どうしてもバンドをやってみたかったんですけど、周りにバンドやってる人がいなかったので、楽器屋さんのメンバー募集を見て、ベースを探しているバンドに連絡してみたんです。それで入ったのが「DIRTY CATS(現The LaLa)」というバンドで。ロックンロールバンドだったので、加入してからはイギリス、アメリカ、日本、いろんなロックンロールを聴いてきました。未だにそのジャンルへの関心は高いです」
伊藤「結構いろいろ聴いてきたので、これがルーツと言い切るのは難しいんですけど、ちっちゃい頃から一番聴いているのは「GLAY」です。親が好きで聴いていたので。ドラムを始めたきっかけでもありますし、曲作りでメロディにこだわっているのは、少なからず「GLAY」の影響があると思います。
ただ、バンドを始めるきっかけになったのは「Oasis」です。「Oasis」は、バンドをやる上でのスタンスというか。空回ってても、尖ってた方がかっこいいな、と思うんです。「THE BEERCH」の時は、「Oasis」の雰囲気とか、UKロックの感じを顕著に出していて。見る人が見れば分かるくらい、そのまんまやってました。今はそこまで顕著ではないですが、バンドの根本的なスタンスの一つの要素であることは間違いないです」
ジョニー「自分は「BUMP OF CHICKEN」とか、その辺りのロックを主に聴いていて、自分もそういう音楽やりたいと思っていました。中学の時に周りの人が結構バンドを組んでいて、ただドラムやっている人は少なかったので、ドラムをやればバンド組めるんじゃないかと思ったのがドラムを始めたきっかけですね」
―伊藤さんは「Knote 」など、他のバンドやサポートでドラムを叩くこともありますよね。そんな伊藤さんが、ジョニーさんのドラムはかっこいいと仰っていましたが、改めてジョニーさんのドラムの特長をお聞きしたいです。
伊藤「ちょうど昨日、「知る権利」(※)のギター・ゆーほさんとそういう話をしていたんですけど、言葉を選ばずに言えば「ドラムを上手く叩くこと」は、俺もできると思っていて。でも、“かっこよさ”で言うとジョニーのドラムは人と違うところが多いんですよ。音はもちろん、視覚的に見せているというか。スリーピースだとステージの中央が空いて、ドラムがど真ん中に見えている状態なので、より分かりやすい。叩いているフォルム、音選び、フレーズ選びも込みで、ただ上手いだけじゃないものを持っていると思いますね」
ジョニー「ライブでの映え方、見た目は注意している部分ではあります。最初からドラムが上手い訳ではなかったので、見え方だけでも上手くなりたいと思って、ライブ映像を見ながら「ここはこういう風に叩いたらかっこいいな」とか、研究することはずっとやってきました」
※知る権利……郡山出身のスリーピースバンド
―バンドや音楽を続ける上で、モチベーションになっていることは何ですか?
ジョニー「自分は、大学から本格的にバンドを始めて、ちょくちょくライブハウスにも出るようになっていったんですけど、働きながらバンドやってる人とか、本格的に音楽活動している人と共演していく内に、自分の好きなことで食べていく、好きなことを仕事にする人たちにすごく憧れていって、自分もそういう風になりたいと思うようになりました。ドラムやるにしろ、バンドやるにしろ、それがモチベーションになってるのかなぁと思います」
タシモ「単純に楽しい。バンド以上に楽しいことをやったことがない、と思えるくらい。“楽しさ”が大きなモチベーションになってます。バンドやってなかったらこの2人とも出会えなかっただろうし、スタジオ入るのも、ライブするのも、遠征するのも楽しい。メンバーである前に友達だから、活動の隅から隅まで楽しいんですよね。できる限り続けていきたいという心持ちで活動しています」
伊藤「2人が言ってることは自分も同じように思ってます。あとライブに関して言うと、良かったなと思える日とダメだなと思う日があって、しかもダメな日の方が多くて。それでも、周りに負けたくない。「絶対俺たちの方が良いでしょ」という気持ちを肯定したい。社会で普通に働くことはできるけど、バンドやってなかったら自分には何もないな、と思うので。そんな劣等感もモチベーションの一つになっていると思います」
―2020年3月1日(日)には、1stミニアルバム『Opera(オペラ)』をリリースされます。
伊藤「CD作る、イコール、ツアーを回る・ライブをいっぱいするということだと思うんですけど、ライブに出るために曲作りをしたというところはあります。あと、現体制で作ったものがほとんどなので、スリーピースになってからの集大成の1枚にもなっていると思います」
タシモ「前メンバーでEPを作った時と、レコーディングの方法を変えてみたんです。東京のレコーディングスタジオでやらせてもらったんですけど、 楽しんでやることができました。スタッフの人に1から教えてもらって、レコーディングについて考えるきっかけにもなって、実りある時間になったと思います。撮れたものも良い仕上がりで、全部最高です。
レコーディングを通して3人の成長が現れていて、また次の音源が楽しみだなという気持ちにもなってますね」
―2020年3月8日(日)には、「福島アウトライン」にて、高校生バンド「Chameleon」のラストライブに出演されます(詳細は下記)。どんなライブになりそうですか?
伊藤「福島市で始めたバンドではありますが、最近は郡山中心に福島県内外を回っていたので、福島市でのライブは久々。新しいCDを持っていって、「最近はこんなことやってました」とちゃんと見せられるようなライブにできればいいなと思っています。
「Chameleon」に限らず、高校生って卒業してバンド終わることってよくあると思うんですけど……解散阻止できるようなライブをやりたい(笑)。辞めることは簡単だし。なおかつ、他のバンドがやりづらくなるような、熱量あるライブがしたい。その日は高校生バンドも多いので、そういう意気込みで臨むつもりです」
―最後に、今後の目標を教えてください。
ジョニー「あんまり大きい目標はないかなぁ。一歩一歩、進んでいきたいので」
タシモ「そうだね。小さな目標を一つひとつクリアしていきたい。ただ、もっと多くのお客さんにライブを見てほしいというのは常にあります。最近仲良くなったバンドで活躍している人達と「一緒に何かやりたいね」って話もちょいちょいしているので、それも実現できたらいいな。あとは、とにかく続けたい。続けることの難しさはずっと感じていることなので、それも考えながら活動していきたいですね」
伊藤「これからアルバムが出ますけど、すでに過去のことのような印象があって。次の新曲を作って、早くレコーディングしたいという気持ちがもうある。
ただ、いくらCDを出しても、いくら肩書きがあっても――例えば、自分たちなら「アラバキ出場経験あり」とか、正直それは全然関係なくて。1本1本のライブで、自分たちのやりたいことをちゃんとやれるかが重要。やりたいことをやるっていうのは、ライブにおいて難しいことなので。自分たちが目指している場所に、正しく行けるように、経験を重ねるしかないのかな、と思います。仲良いバンドはいるんですが、基本的には孤高の存在でありたいです。一緒にシーンを盛り上げていく、というよりは、自分たちがガンガンやっていくことで底上げできればいいなと思っています」
(取材日:2020年2月11日)
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撮影場所/福島アウトライン