福島県最南端で、豊かな自然と温暖な気候に恵まれた矢祭町。イチゴやユズなどの特産品に加え、カーネーションやシクラメンなどの鉢花の生産量は福島県内屈指を誇る。真っ赤な実がかわいいラズベリーは新たな名産として注目されている。
15年かけて叶えた国産ラズベリー。目指すは生産量とおいしさ日本一
甘酸っぱく、かわいらしい赤い実のラズベリー。お菓子やジャムになったものをいただくことが多く、日本での消費量は年間1,000t以上とか。そのほとんどが輸入したもので国内で採れるのはわずか10tほど。
もとはヨーロッパで自生していたラズベリーを15年かけて改良し、新品種を作り上げたのが、矢祭町の「矢祭園芸」。福島県内随一の大きな花農家を営むかたわら、17年前からラズベリーの栽培に取り組んできた。代表の金澤美浩さんに話を伺った。
「花の栽培だけでなく、交配をして新品種を作る育種にも取り組んできたところ、ある果物輸入会社から国産ラズベリーの育種を依頼されたのがきっかけです」と当時を振り返る。理想の品種ができたと思っても翌年には枯れてしまったり、病気に負けることも多く、開発は15年にも及んだ。
その中で、奇跡的に出合ったのが現在栽培をしている品種だ。ラズベリーは年に1、2度実をつけるのが一般的だが、矢祭園芸では長期間実が成り、収穫量も多い。「夢は矢祭町がラズベリーの生産量もおいしさも、日本一になること」と笑顔があふれた。
地域おこし協力隊も農園で活躍。矢祭町の名産は高い技術力を誇る鉢花
ラズベリー栽培の作業開始は朝5時。ベリー類は気温の低い時間帯に収穫するのが常識で、女性スタッフ5人と地域おこし協力隊の2人が作業に従事する。「ベリー類は表面がデリケートなため、雨や日差し、虫にも弱く、品質管理が大変です」と金澤さん。1粒1粒手間をかけ完熟した実を見極めながら丁寧に手作業で収穫していく。収穫後は冷凍や加工処理をして出荷される。
矢祭町といえば、昼夜の寒暖差を生かし、高い技術力で栽培に取り組む鉢花も有名だ。矢祭園芸も年間を通して多種多彩な花を栽培し、全国に良質の花を届けている。
ラズベリー栽培は手間を惜しまず丁寧に。生産を安定させて矢祭町の特産品への活用も
ラズベリーは表面が繊細なので雨除けや日除けのためのハウスで大切に育て、手間を惜しまずに1粒1粒手作業で収穫しています。現在の栽培面積は約20アールで2021年は約4tの収穫量が見込めます。本格的に栽培すれば日本一も夢ではないので、遊休農地を活用して雇用を創出し、ラズベリーを使った町の特産品を作っていきたいです。
矢祭町産のラズベリーを使った、おいしいカフェスイーツも誕生
矢祭園芸の新たな挑戦は、ラズベリーを矢祭町の名産にすること。町内のカフェや菓子店に協力してもらい、スイーツ作りも始めた。
木のぬくもりあふれるカフェ「珈琲香坊」では、サクッふわのケーキにラズベリー入りの生クリームをたっぷりサンド。冷凍のラズベリーをジャムにしてから生クリームに混ぜるのがポイントとか。軽やか食感の爽やかな甘さが口いっぱいに広がる。
Information
珈琲香坊
- 住所
- 電話番号
- 0247-34-1131
- 営業時間
- 10:00〜18:00
- 休み
- 毎週水曜日、最終木曜日
Information
[矢祭町特産]ラズベリー
- 問い合わせ先
- 矢祭町事業課産業グループ
- 問い合わせ先
電話番号 - 0247-46-4576