各地で神社例大祭が行われる10月。
第97回の「ふくしま定食部」は、針道のあばれ山車で御馴染み、諏訪神社例大祭を目前に控えた二本松市針道(旧東和町)へ向かいます。

二本松市とはいえもう少しで田村市。福島市街からは飯野町を抜けて約50分。
針道商店街に入ると、大正時代から続く「川崎屋食堂」さんがテトリスなら最後に来てほしい形の外観で佇んでいます。
駐車スペースは3台ほど。タイミングよくお尻から駐車したら、大きな濃紺の暖簾を潜ります。

入った瞬間に目に入る、畳、扇風機、テレビ。毎度ながら夏に実家へ帰省した感覚に心がほぐれます。

思わず「ただいま!」と言いそうになりましたが、あばれ山車ならぬ、あばれ胃袋を鎮めようと頭上のメニュー札を1往復。

今回の注文は代名詞の手打ちうどん。せっかくなのでセットでお願いしましょう!
川崎屋さんはうどんの他にも煮込カツ丼も名物。注文が入ってから揚げられる豚ロース。出汁とラーメンスープで仕立てられるつゆが玉子にも玉ねぎにもよく染みて、海苔の風味も食欲を誘います。

ワイドショーに物申す、先客の先輩紳士に相槌を打ちながら待つこと10分。
お盆の上に隙間なく配置された「うどんセット」が到着。手打ちの肉うどんに、半ライス、玉子焼き、小鉢の和え物とお母さんの温かみ全開の内容。

まずは、ウエルカム浅漬けとばかりに、出雲から取り寄せる塩で漬けたきゅうりをパリッと。


さて、お目当てのうどんに箸を移しましょう。
丼に箸を潜して持ち上げたなら、表情豊かなうどんの愛すべき形状とご対面。毎週仕込む生地をローラーで伸ばして、打って、こねて。
すいとんのような懐かしくも素朴な味わいは、まさにお母さんのうどん。

コシの強いタイプのうどんも良いのですが、川崎屋さんは柔らか仕立て。でもこういう滑らかな口当たりのうどんは時を越えた情緒に癒やされるものです。

鰹節・鯖節などからとるしっかり目のつゆは、太いうどんに負けない風味。具材もつゆで煮込んだ豚バラと長ねぎ。
あったかいなぁ、やさしいなぁ。と夢中で頬張っていると、隣りでやさしく微笑む玉子焼きと目が合いました。


ゴールしたランナーをタオルで包むように、薄焼きの玉子焼きでそっとご飯をロール。野菜にポテサラと充実の一皿はメイン級。
うどんをすすってつゆをズズっと。次はごはんを頬張ってつゆをすすって。胃にも心にも溜息が出るほど染み渡る、しあわせ2ウェイの行ったり来たりが、いつまでも続いて欲しい味わい。
「以前は半うどん・半ライスに焼き魚を付けていたけど、うどん目当ての方が多いから、普通サイズのうどんに半ライスと玉子焼きに変えたんです」と教えてくださいました。たしかにこのバランスが正解ですね。

うどん、カツ丼にならんでラーメンセットも人気。豚骨・鶏ガラに合わせる、鰹節などの旨みが詰まった醤油スープがまろやか。
やや細目な縮れ麺がスープを引き上げてシンプルだからこその旨さ。チャーシュー、メンマに海苔が乗ったこれぞ食堂のラーメン!

福島市内の割烹で修行されたご主人の料理で盛況だった結婚式場や、民宿も備えていた川崎屋さん。
特にうなぎが名物で、テーブル席の後ろに今なお残されている生簀ひとつ見ても、名店であることやご主人の腕の良さが分かります。


「お父さん(店主)が今年(2025年)亡くなって、暖簾も古くなったからもう辞めようかな…とも思ったけど、でも、ひとりで居ても何もすることもないし、それではと暖簾を新しくして、続けられる限りやってみようかなって」と決意を新たに再出発。

「私があと何年続けられるか分からないけど、もし継ぐ方がいるのならうどん作りも伝授したいんです」
道の駅以外では東和町唯一の食堂。川崎屋さんの味は無くてはならない地域の楽しみ。無理せず自然体で長く続けてほしい。


また、帰省気分でお母さんとの会話と手打ちうどんを楽しみに寄らせて下さい。
ごちそうさまでした!
Information
川崎屋食堂
- 住所
- 電話番号
- 0243-46-2503
- 営業時間
- 11:00~17:00※変更の場合あり
- 休み
- 毎週月曜日
- 駐車場
- あり