古関家ゆかりの石橋の上で語り合う二人を妄想
間が空いてしまいましたが、久々に書かせていただきます。これからは福島ネタが見つかった時に不定期で連載していくので温かく見守ってください(早くも弱腰)。
第74話で、映画「暁に祈る」の主題歌を作ることになった主人公・裕一と鉄男。歌詞に何度もダメ出しされて気落ちする鉄男に、何かきっかけを掴んでもらいたいと、二人で故郷・福島市に帰る場面が描かれていました。久々に福島が登場するので、テンションが上がった福島人は多かったのではないでしょうか?
この回で特に私が注目したのは、二人の恩師でもある藤堂先生が、悩んでいる鉄男に石橋の上でアドバイスするシーン。「出征する自分のことを思って歌詞を書いてみては」と、静かに語りかける場面です。二人は神社の参道から続く石橋の上に立っているのですが、このような場所は福島市内にはないので、おそらく他地域でロケしたものと思われます。
でも、実際の福島に当てはめるとしたら、この石橋はどこの橋になるか?
そう考えた時に、私の頭に浮かんだのは、「旧秡川(はらいがわ)橋」です。この橋は、福島盆地の中心部にある信夫山のふもと、「信夫山公園」の噴水広場付近(駒山公園)にあります。かなり目立たない存在なので、地元でもあまり知られていません。
街なかから歩いて行ける距離にあり、劇中での設定上も無理はないし、石橋自体も、画面に映る橋よりは小ぶりですが、雰囲気があって違和感はないと思われます。
そして何より、私がこの橋を推したいのは「エール」にまつわるエピソードを秘めているからです。
橋のそばにある説明看板によると、この石橋は享和年間(江戸時代後期)に造られたもので、これを寄進(寄付)したのは「古関三郎治」と記されています。調べてみると、この方はなんと古関裕而の曽祖父(五代目・三郎治)ということが分かりました!
主人公・裕一のひい爺さんが造った橋の上で、裕一にゆかりがある二人が佇んでいると想像すると、うれしくなりませんか?
まぁ、いつもの「だったらいいのにな」的な妄想で、無理やりこじつけてみました。許してやってください(笑)
歌碑と信夫山をつなぐ「暁」というワード
さて、ドラマでは、福島への帰郷をきっかけに、鉄男は見事に歌詞を書き上げ、「暁に祈る」の主題歌が完成。「福島三羽ガラス」による最初のヒット曲となる流れですが、信夫山を取り上げたからには、「暁に祈る」の歌碑のことに触れないわけにはいきません。
歌碑は、信夫山の第一展望台のすぐそば、「五つ石」と呼ばれる大きな岩にはめ込まれてます。
でもなぜ、この場所にこの歌碑があるのか?信夫山を舞台にした歌ではないし、歌詞にも出てこないし、野村俊夫の実家が近くにあったわけでもなさそうだし…。私が調べた限りではよく分かりませんでした。でも、おそらく福島人なら、「歌にも信夫山にも『暁』が関係している」ということで、納得できるのではないかと思います。
信夫山では毎年2月10日・11日に「暁まいり」というお祭りが行われています。大きな草鞋(わらじ)を山頂に奉納する「大わらじの奉納」がメインの祭りです。かつては夜通し、それこそ暁(夜明け前)の頃まで大勢の人で賑わった、地域最大のお祭りでした(今もそれなりに盛況ですよ)。おそらく古関裕而や野村俊夫にとっても、馴染み深い年中行事だったはずです。偶然とはいえ、そんな身近な祭りの名前と同じ「暁」という言葉が使われた映画の仕事を受けた二人は、きっと運命的なものを感じたはず(たぶん)。そんなことを想いながら歌碑を眺めると、味わい深く感じられるのではないでしょうか。
ちなみに、福島県が最初に栽培に成功したとされる桃「あかつき」の名称も、暁まいりが由来だそう。意外と、福島と「暁」が絡むエピソードは多いんですよ。