福島県南相馬市に実在する映画館「朝日座」が舞台となった映画『浜の朝日の嘘つきどもと』。福島中央テレビ開局50周年記念作品として制作、福島県で撮影され、2020年秋にはテレビドラマも放送されました。
経営が傾いた映画館を、先生との約束を果たすため、小さな“嘘”をついても守ろうとする、映画館愛と人間愛あふれる物語。主演は高畑充希、他、柳家喬太郎や大久保佳代子、多彩なキャストが出演しています。脚本・監督を務めたのは、『百万円と苦虫女』や『ロマンスドール』などを手掛けた、タナダユキ監督。今回、舞台あいさつで再び福島を訪れた、タナダユキ監督に撮影のエピソードや映画への思いなどを伺ってきました。
今回、「朝日座」を舞台にしようとした理由を教えてください。
映画館って、色んな人がそれぞれ違う想いを抱えてやってくる場所で、同じものを見て、同じところで感動したり、笑ったりという空間だなと思っていて。最初に、映画館を舞台にしたら、何か一つお話が作れるんじゃないかなと思っていました。そこで、撮影場所を探していた時に、朝日座さんが見つかって。
実は、企画段階で福島中央テレビさんからは、「震災のことは入れなくてもいいです、福島が舞台であればいいです」と、すごく自由にやらせていただいていたんですが、導かれるように見つけた映画館が南相馬という場所に存在したので、震災というものに全く触れないというのもおかしいなと思って。自分としては本当に、呼ばれていったのかなという風に感じています。
他にも福島の様々な土地が映画に登場してきました。
浄土平は、インターネットで見つけたんです。ドライブで良い景色のところはないかとネットで探していたら、こんなすごい所があるんだ!って。ところが、すごく天気が変わりやすい場所で、ロケハンに行った時もどん曇りで。一応みんなで見晴らしの良い頂上まで登ったのですが、何も見えず(笑)。下見のため別の日に足を運んでいたスタッフが撮っていた、晴れの時の写真を霧の中iPadで見るという……。
だから、撮影の時に晴れたのは奇跡的だと思いました。撮影の日もずっと朝から雨が降っていたんです。空を見ても「これは無理なんじゃないか」と思うくらい、暗雲が垂れ込めていまして。それでもみんなで晴れを信じてひたすら待っていたら、午後になってようやく日が射しました。そのあとは見事に晴れて。あの時は本当にダメかと思いました。
福島を訪れてみて、印象的な場所・ことはありますか。
映画では入れられなかったのですが、南相馬にある「野馬追」というお祭りです。映像で見ただけですが、人馬一体となったこんなに迫力のあるお祭りがあるんだって。いつか機会があったら見てみたいなと思いました。
だからなのか、南相馬市を車で巡っている時に、軒先に馬がいるお宅があって、馬がいるおうちって初めて見ましたが、おもしろい光景でした。馬を大切にしている文化なんでしょうね。
福島で食べておいしかった物はありましたか。
コロナ禍だからみんなでワイワイ食べることはできませんでしたが、南相馬は大きな町ではないですけど、おいしい焼肉屋さんや焼鳥屋さん、ピザがおいしいお店など、色々ありました。
ドラマ版の撮影で使わせて頂いた喫茶店のコーヒーも、映画版でお世話になったお肉屋さんのコロッケも、和菓子屋さんのお饅頭もオススメです。浄土平のソフトクリームもおいしかったです。あとは、原町製パンさんの「よつわりパン」も、初めて食べるのに懐かしい感じがしておいしかったです。
最後にメッセージをお願いします。
悪い人があんまり出てこない映画なんです。けれど、それぞれの正しさを貫こうとすると、どうしても軋轢が生まれてしまう。そんな時、それでも自分が正しいと思うことを信じて生きていくしかないんですよね。
主人公の莉子には、家族とは何か、恩師との約束、迷いなどを託していますが、重いテーマを軽やかにやることを目指したので、肩肘張らずに見ていただけるといいなぁと思います。
自分より遠い人じゃなくて、自分にもちょっと近いような人たちの生活の一端を覗くみたいな。それぐらい気軽な感じて見てもらえるとうれしいなと思います。
Information
映画 浜の朝日の嘘つきどもと
- 開催期間
- 2021年9月3日(金)~※郡山テアトルは8月27日(金)~
- リンク
-
https://hamano-asahi.jp/
- 備考
- 配給:ポニーキャニオン
【福島県内の上映館問い合わせ先】
郡山テアトル 電話/024-922-0826
イオンシネマ福島 電話/024-533-0740
フォーラム福島 電話/024-533-1717
ポレポレシネマズいわき小名浜 電話/0246-54-1212