おかげさまで「ふくしま定食部」は部員1万人を達成。記念企画として『食堂・定食へのラブレター』を募集しました(募集は2021年3月上旬に締め切りました)。
"こんなご時世だからこそ、いつもは注文時しか言葉を交わさない愛すべき食堂のみなさんへ食堂愛を届ける"ということを目的としており、たくさんのメッセージをご応募いただきました。温かい気持ちになるエピソードや、目頭が熱くなる想いなど、みなさんの食堂愛を見せつけられました。
その中から「ふくしま定食部」部員でもある伊達雅充さんからの、福島市「鉢の木」さんへのメッセージを直接、お届けしてまいりました。
南福島で創業51年目、老舗の定食屋「鉢の木」さんへ!

伊達さんは10年前の東日本大震災の時、停電の上に水道も止まり、食事もままならない状況だったそう。しかし、通りがかった「鉢の木」さんの前で販売されていた「カツ丼弁当」(現在は販売しておりません)に救われたとおっしゃいます。
「鉢の木」の皆さんも同じように不自由しているのだろうと、伊達さんが店主に尋ねたところ「自分達の分はいいから、みんなに食べてもらいたいんだよ」という返事に感激。その思い出は10年経った今でも深く心に残っていると教えてくださいました。

店主も当時のことをはっきりと覚えておられ、「震災の時は、二本松から水を運んで来ていたんだよ」とのこと。
つまりは自分たちも大変な状況の中、地域の皆さんのために二本松から水を運んで来て弁当を提供してくださっていたんですね。ホントに頭の下がる思いです。

他にも同じ想いの方はいらっしゃいました。
10年前、相双地区から福島市に一時避難してきたおばあさんが、当時「鉢の木」さんで食べた親子丼を懐かしんで、つい先日来店したそう。しかし、現在はメニューが「生姜焼き定食」のみであることを知り、残念がられていたそうです。

今日ご厚意で提供いただいた「生姜焼き定食」は、実は創業当時は「鉢の木定食」という名称でした。毎回お客さんに内容を聞かれるので、「生姜焼き定食」に改名したそうです。
当時は「焼き肉定食」は知られていても、「生姜焼き定食」はまだ珍しかったため、すぐに人気メニューに。今回も、調理場の撮影はもちろん、作り方も秘密ということで、まさに50年を超える秘伝の味。「元祖・生姜焼き定食」です。

分厚い生姜焼きは、生姜がこぼれないように注意しつつ、鍵盤で言うところの“ミ”の位置から抜き取っていただきましょう。
醤油ダレを纏うにジャストな薄い衣の食感も心地よい、食べ応えありの豚ロースは、真一文字に乗せられた生姜がビシッと効いた味わいでたまりません。
今日は、伊達さんがよくやるという、ラジウム玉子にディップする反則級の食べ方をまねします。

さらには、ぬか床の管理も大変と仰る、女将さんお手製のぬか漬けも脇役には贅沢な一皿。
ああ、お腹も心も満たされていきますね。

鎌倉時代の武士・源左衛門常世が、貧しいながらも宿を求める旅の僧に、せめてもと家宝の三鉢の盆栽を薪にして火にくべたという謡曲「鉢木」にまつわる由来そのままに、先代から続く、歴史に奢らないホスピタリティが伝わります。
食事を提供をするだけではないお店の想いと、お腹を満たすだけではないお客の想い。その各々がもしかしたらお互いに思っている以上にお互いが思っていた。それがしっかり伝わった、あたたかい時間でした。


いつまでも在り続けてください。
ごちそうさまでした。
Information
お食事 鉢の木
- 住所
- 電話番号
- 024-545-0921
- 営業時間
- 11:30~14:30(14:00ラストオーダー)
- 休み
- 毎週火曜日
- 駐車場
- 7台