梅雨の合間の6月。第94回の「ふくしま定食部」は東北本線に揺られJR白河駅へ。新白河駅ではなく白河駅で降りたのはレンタサイクルに乗り換えるため。

駅となりの「しらかわ観光ステーション」からレンタル無料のママチャリで出発。※電動アシストやクロスバイクは3時間まで500円。
小峰城を背に、白河旭高校を迂回するように15分ほど疾走。ラスト1kmの長い坂道を越え、南湖公園を東口から入ると「湖畔亭」さんの白い看板が見えてきました。

店先に自転車を停めて湖畔を覗くと、スイレンのピンク色が綺麗ですが、見たかった黄色のコウホネは見つけられず。

“湖畔亭”の文字からあみだくじでタイルを辿れば、あとは剣道の垂れを彷彿とさせる濃紺の暖簾を潜るだけ。
さすがは観光地の食堂。ゆうに100名は入れる広々空間。テーブル席と座敷がありますが、窓を額縁に見立てて南湖公園を借景できるテーブル席へ。冬は囲炉裏になるテーブルや、木桶の蓋のテーブルもあってどれも座りたくなります。


テーブルについた肘からも伝わる、創業55年の木の風合いは、夏に帰省した実家のような懐かしさ。休日・平日でメニューは変わりますが、通しでメニュー入りする人気の「焼肉定食」をお願いすることにしましょう。


平日メニューなら「そば定食」ですね。白河そば・白河ラーメンから選べる麺類に、日替わりのおかず、ごはん、小鉢が付く平日限定セットが豪勢。

セットのラーメンと侮ると、南湖へ転げ落ちそうになるほど驚く本格の白河ラーメン。平打ちの多加水麺が持ち上げるスープの、鶏ガラ・豚ガラ・香味野菜が生み出すコクがじんわりと染み渡ります。

外ももを使ったチャーシューもしっとり柔らかく、スープ・麺・具材のどれもがハイレベル。気付いたときにはすでに7割近く食べ進んでいました。
海老の天ぷらや焼き肉など、麺類なしでも定食として成立するほどの平日の特権。焼肉定食と並ぶ定食ツートップは「煮込みカツ定食」。

カツのザクっとした衣が陶板で煮込まれて、つゆをたっぷりと染ませたまま口まで運んでくれます。厚みのあるカツを覆う玉子も、しっかり目な部分ととろり流体な部分のコントラストで食感にリズムをもたらします。
“煮込みカツ お代わりしたら 2個目カツ”
一句詠むなか運ばれてきた「焼肉定食」の和からしの黄色を見て、探していたコウホネをここに見つけたと感激!

ひと口頬張ると「旨い醤油のコク!」
自慢の白河そばのカエシをベースした焼き肉のたれは、甘みと酸味を伴って、やわらかい豚バラ肉によく染み込んでごはんに合う合う。
フラメンコドレスのような豚バラのウエーブは、即ち甘みを伴う脂身の誘惑。半世紀続くロングセラーなのも頷けますよね。


セルフで構築した焼肉丼のビジュアルに、よだれで南湖の水かさが増えた気がしました。


夢中で頬張ってすっかり満足してクールダウン。茶碗の蓋を閉じて、まぶたを閉じて。
元々、先代は白河市新蔵町で惣菜店を営んでおられました。南湖公園となりに開店するにあたり、自ら田を盛り土してヤギなどの動物を放し、子どもたちが喜ぶ食堂を目指したそうです。
みんなに喜んでもらいたいという先代の想いは「ラーメンとカレーは値段で決まる」の言葉とともに、現在もボリュームに見合わぬ価格で継承されています。
「春の花見やお盆時期は特に混むんですよ」と仰る店主の穏やかな笑顔とサービス精神。まるで自宅の広間で食事を楽しむような安らぎ。いつまでも在り続けてほしい場所です。


再度、自転車にまたがり帰る下り坂は、満足感と爽快感に包まれていました。
余韻に浸りつつ揺られる東北本線。次回お邪魔するときは、木桶の蓋のテーブルでポテサラと清酒をいただこうと、観光ステーションで購入したワンカップで予習しながら帰ります。
ごちそうさまでした!
Information
湖畔亭
- 住所
- 電話番号
- 0248-23-3281
- 営業時間
- 11:00~14:30
- 休み
- 毎週火曜日、第1・3水曜日
- 駐車場
- 14台
- リンク
-
http://www.tpo21.com/kohantei/