
近ごろ、ミュージカル映画がかつての輝きを取り戻しつつあるように思う。
「ラ・ラ・ランド」は、最近の大ヒットミュージカルとして、皆の記憶に新しいところだが、実はミュージカル映画というジャンルは長く退潮傾向にあった。
それが、ディズニーのアニメミュージカル映画「美女と野獣」が大人にも受け入れられ、ヒットしたことで、状況が変わった。実写作品もそれに続き、「シカゴ」「マンマ・ミーア!」「RENT/レント」など人気ブロードウェイ作品の映像化という形で、近年になってようやく復調の兆しを見せていたのだ。

そして今年、映画史に長く名を残すであろう傑作ミュージカル映画がついに公開された。それが「グレイテスト・ショーマン」である。制作に7年の月日を費やし、一流のキャストとスタッフがその魅力と実力を余すことなく発揮した、オリジナルのシネ・ミュージカルだ。
主人公のフィニアス・テイラー・バーナムは、19世紀中頃に実在したアメリカの興行師で、現在におけるショービジネスの原点を築き、成功を収めた人物である。本作は彼の半生を題材に、ユニークなアイディアでどん底から這い上がり、その画期的なショーによって成功を収めるまでの物語だ。しかし、愛や友情といった普遍的なテーマとともに、多様性の受け入れという現代にとって重要なテーマにも焦点が置かれている。
バーナムがショーのためにスカウトするのは、差別や偏見の中で立ち尽くしていた人々だ。社会から疎外されていた彼らが、その個性によってパフォーマーとして注目を浴び、自分の居場所を見出していく。彼らは人が「普通」という言葉の定義をいかに狭めているかという問いを投げかけてくる重要な役割を果たしている。
とはいえ、そこに重苦しさはない。むしろ「人と違う部分こそ、自分をクールでスペシャルなものにしてくれる」というポジティブなメッセージを我々に届けてくれるのだ。パフォーマーたちがステージ上で“これが、私”とエモーショナルに歌うシーンなどは、観ているこちらのコンプレックスをも吹き飛ばしてくれそうなパワーに満ちていて、思わず拍手喝采したくなってしまうほど。

さて、ミュージカルの命ともいうべき楽曲は19世紀の時代的なコスチュームとは対照的に、ビートの効いた現代音楽になっている。どの曲も非常にセンスがよく、つい前のめりで聴き入ってしまう。そうした心躍る楽曲の数々はゴージャスなダンスシーンとマッチして、なお一層感動を深め、ミュージカルの醍醐味をこれでもかというくらい味わわせてくれる。バーナムがショーの謳い文句にしていた「The Greatest Show on Earth(地上最大のショー)」の言葉にふさわしい、光り輝くミュージカルを、ぜひとも劇場で堪能してほしい。