畏敬と慈愛と霊峰と
錦秋に 汽笛ひびきて 山笑ふ 浅草岳に 雲の影ゆく
国境のトンネルを抜け、列車は勇躍してやってくる。背後には雪冠霊峰の浅草岳がそびえている。秋深き奥会津はまさに色彩の楽園で、燃える楓と黄金にきらめく楢の葉と、それを包み込む山肌の茶褐色。自然の調べが幾重にも折り重なって、夢幻の景観を織りなしている。
古来より畏敬の念を抱かせてきた浅草岳は、その厳粛な姿と裏腹に、里を潤し人々を守り続けてきた慈愛の心が漂っている。山肌はすでに冬の気配を帯び、白き雪がその頂を染めている。
この地を訪れる旅人は車窓を流れる錦秋絵巻に心奪われ、大山河と人と鉄道が共に生きてきた歳月の重みにも、感嘆を禁じ得ない。霊峰見下ろす只見の里は、悠久の静けさをたたえて旅人達を迎えている。
この写真の撮影地は急峻につきおすすめは出来ないので、近くの田子倉休憩所に駐車し、橋上から撮っていただきたい。レンズは24mmから105mm。
文・写真/星 賢孝
Information
晩秋の只見町「浅草岳」を背景に走る只見線列車
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