出会いと別れの季節。お世話になった先輩と、あるいは新たな仲間といただく定食もまた味わい深いでものです。
第9回の定食部は、大正13年創業、福島が誇る老舗食堂『マルイチ 神田軒』さん。
初代店主が屋台ラーメンを引いていたのがはじまり。その時の屋号であった店名を引き継ぎ、現在は三代目が味を守っております。
中央郵便局や保健福祉センターからの立ち寄りのみならず、映画を観た後の食事にもピッタリな立地。多彩なメニューに集まるファンで、いつも賑わっております。
魅惑の月替わりランチA・Bが気になりますが、ハンカチほどもあろうかというワンタンのスープがうれしい、マーボー丼やチキンライスも好きなんです。そこに四川料理やひやしラーメンも人気ですから、さらに迷うわけですよ。
今日はお腹が減っているので、ここは四川料理を気軽に楽しめて、ボリュームもあるマーボー丼を迷うヒマなくチョイスです。ほかのお客さんと同じく、テレビに視線を預け、落ち着いた店内の雰囲気と、オーダーをとるキビキビとした振る舞いの心地良さに包まれながら待ちます。
さあ、運ばれてきました!
三代目が修業に出ていた四川料理とあって、一から手づくり。唐辛子の辛さや山椒の痺れが優しく抑えめなのは、四川料理がまだ馴染みのなかった頃に、辛いものに慣れていないお客さんの好みを考えてのもの。長年愛されているお店ゆえのちょうどいい味わいなのだと分かると、ごはんと一緒に歴史ごと味わっている気分でうれしくなります。
うっかりすると、夢中で一気に食べきってしまいそうなので、ここで冷静にワンタンスープへれんげを移動します。
このワンタン、ただごとではないんです!
明治から大正期、福島の屋台で人気だったのがラーメンとワンタン。昭和3年には「福島雲吞露商組合」も結成されるほど。
屋台街を取り仕切っていたのが『神田軒』さん。その一番弟子のみが冠することを許された屋号こそが“マルイチ”ですから、福島市の中華・ラーメンの起源とも言えるこの雲吞は驚愕の一品なわけです。
このワンタンが泳ぐスープがまた澄んだ醤油ベースでここちよいです。自慢の地下水と地鶏の出汁が調和した淡麗な醤油スープは、すうーっと体に染み込んでいきます。これは、れんげで掬えなくなるほど飲み干しても、あと5スナップはしたくなりますね。
まもなく創業百年の『マルイチ 神田軒』さんが、"いつもの食堂"であり続けている陰には、言われなければ気づかないような部分にこそ惜しまぬ努力をされ、"変わらないために変えている"姿勢がありました。
さらに進化する老舗のパワーにフル充電させていただいて、午後も頑張れそうです。
ごちそうさまでした。
Information
マルイチ 神田軒
- 住所
- 電話番号
- 024-534-4831
- 営業時間
- 11:00~21:00(20:50ラストオーダー)※配達は11:30~20:00
- 休み
- 毎週木曜日
- 駐車場
- 10台
- リンク
-
https://kandaken.grupo.jp/