第99回「ふくしま定食部」は、節目を前にお邪魔しておきたかったお店を目指し、常磐道でいわき市へ向かいます。
いわき湯本ICで降りたなら、鹿島街道を小名浜方面へ約20分。遠くに「アクアマリンふくしま」が見えてきたあたりで右折すると「炒飯専門店 東や3代目」さんがあります。
営業中を立て看板で確認したら、陽の差し込む明るい店内へ。東やさんのシステムは先払い制。やはり炒飯をオーダーされる方が大半ですが、定食などもあるんです。
東やさんは台湾出身の初代が昭和23年に「東屋食堂」として横浜市に創業。その後、中華を学んだ2代目・3代目が加わり、昭和34年に女将さんの故郷いわき市へ移転。「お食事処 東や」として長年愛されてきました。
令和4年に一度閉店となりますが、復活を望む声の多さに3代目が炒飯専門店として復活を決意しました。
先代の味を懐かしむ方のために、当時の味を復活させたメニューは、唐揚げ定食や酢豚定食、かつ丼、オムライスなど。※限定・予約制のものもあります
今日はあまりの人気にレギュラー化した「焼肉定食」をお願いします。それと、1日限定10個の「杏仁豆腐」にも間に合いました。
通りを眺めるカウンターに陣取り、台湾を感じる華やかなランプの下、「中華一番」を読みながら待ちます。
初代からの人気No.1「焼肉定食」が運ばれてきました。
とろけるような麓山高原豚の上に満遍なく広げられた自家製のピリ辛ダレは、芽子にんにくのパンチあるコクと若干の辛みがご飯を捗らせます。
この濃厚タレとキャベツのドレッシング、2つの共通部分“積集合”のところがまた得も言えぬ旨さ。
噛むほどに旨みがリフレイン。しっかり目に味付けされた焼き肉を頬張ったら、すぐさまライス!そして肉!そしてライス!
これぞ、初代から愛され続けてきた焼肉定食。これぞ秘伝のタレがもたらす満足感。
終盤に差し掛かったタイミングで、横浜中華街「聘珍楼(ヘイチンロウ)」の味を再現した「正宗杏仁豆腐」の到着です。※正宗とは本物の意味
せっかくいわきまで来て、1食だけじゃ勿体ない!土・日曜日は夜の部もあるので、一旦、小名浜を散策してお腹を空かせて戻ってきます。
イオンモールや道の駅を颯爽と歩く間も、以前いただいたカツ丼(要予約)を思い出してはニヤニヤ。
創業時から変わらぬ丼タレで煮込まれるカツ丼は時を超えた美味しさ。玉子かけご飯のようなとろとろさと、出汁の染みた衣と天のつぶの歯触り。麓山高原豚を使用したカツは厚みがあっても柔らかく、脂身が甘くてうっとり旨い。
すっかり日も暮れた午後5時。再び舞い戻ってきた夜の部は炒飯と決めていましたが、種類の豊富さに迷います。
それではと人気No.1、2の合い盛り「よくばり炒飯」、そして水餃子を追加しましょう。
合い盛りの左側は繊細なオレンジ、「爆旨えびちり炒飯(極)」。
エビの頭を裏漉しして取る出汁といわき市産トマトの特製チリソースが、ジャンボなエビに纏わりついて堪らないほどにコク爽やか。
右側にはパンチの効いたブラウン、「秘伝焼肉炒飯」。
焼肉定食にも使われる秘伝のピリ辛ダレを引き連れた麗山高原豚が肉々しい食べ応え。この満足感はハンパない!
ベースの炒飯を火力ではなく情熱で炒めているのではと思うほどパラりとシンプルに旨く、そこにダブルの贅沢が乗っているんですから「合い盛り」を超えて「愛盛り」。
小籠包のような水餃子はモチぷるな皮を噛んだ瞬間、肉汁が溢れ出して口の中いっぱいに至福で満たされます。
焼き肉には麗山高原豚、タレには芽子にんにく、そして米は「天のつぶ」。東やさんはできる限り、いわき市産の食材を使われます。台湾をルーツに持つことの誇りと、町の食堂として長年愛されてきたいわき市への思い。
初代が起こした食堂を継承するんだという気概が伝わりますが、私は3代目の炒飯・定食が食べたくていわきへ来ています。なので、伝統に革新を添えたアップデートでますます楽しませてほしいんです。
3代目も敬愛する漫画「中華一番」でも、“常に創意工夫をもって従来の味を打ち破る姿勢こそ陽泉の伝統だ”と言っていました。
惜しくも閉店されるお店の話を耳にしますが、地域に愛される味わいが継承される姿がうれしくて、うれしくて。
それが、コラム100回の前にこちらを選ばせていただいた理由でもあります。東やさんは、私の中の特級厨師認定です!
ごちそうさまでした!
Information
炒飯専門店 東や3代目
- 住所
- 電話番号
- 0246-54-3044
- 営業時間
- 11:00~14:00
※土・日曜祝日は17:00~19:00も営業 - 休み
- 毎週水曜日
- 駐車場
- 6台
- リンク
-
https://azumaya3daime.com/


