奥会津の隠れ里・昭和村で風情ある景色や文化に触れる

昭和村は福島県の南西部、奥会津と呼ばれるエリアに位置する人口約1,200人の村。1927年、大芦村と野尻村の合併により誕生した。周囲を1,000m級の山々に囲まれ、さながら隠れ里といった雰囲気を今に伝える。豊かな自然環境から景観の美しさは福島県内でも指折りで、国の天然記念物に指定されている駒止(こまど)湿原をはじめ、矢ノ原湿原や玉川渓谷などさまざまな名所が点在する。
中でも近年注目を集めている観光スポットといえば「喰丸小(くいまるしょう)」だろう。1937年に開校、1979年に廃校となった旧喰丸小学校の趣深い木造校舎は、取り壊しの危機を免れ、2018年に昭和村の交流・観光拠点施設としてリニューアル。特に秋の紅葉シーズンには、校庭にそびえる樹齢120年以上の大イチョウが色づき、木造校舎と相まってノスタルジックな風景を見せてくれる。
ほかにも、特産品の「からむし織」やカスミソウなどのお土産品を購入できる『道の駅 からむし織の里しょうわ』や、昭和村内唯一の温泉宿『しらかば荘』など気軽に立ち寄れる施設があり、ドライブがてらめぐるのにも最適。今回はそんな昭和村で暮らす二人の人物を訪ね、よりディープな魅力にも迫ってみたい。
昭和村全体が取り組んだカスミソウ栽培で日本一に

ハウスの中に足を踏み入れると、目に飛び込んで来たのは一面のつぶらな白い花。昭和村は夏秋期のカスミソウの生産量が日本一。現在約50世帯が栽培に携わり、年間約400万本を出荷している。
昭和村でカスミソウが栽培されるようになったのは1983年のこと。それまで主流だった葉タバコが、日本専売公社の民営化により廃作となり、代わりの作物を模索する中で候補に上がったのがカスミソウだった。
「当時は1本が1,000円で売れたんですよ」と振り返るのは菅家博昭さん。昭和村のカスミソウ栽培を牽引する人物として、品質を高め、販路を拡大することに邁進してきた。「カスミソウは独特のにおいがあって花屋でも嫌われ者でしたが、におい抑制剤で前処理をし、軽減できるようになりました。また、染料を吸わせて着色し、カラフルに仕上げたものも人気があります」

そんな菅家さんら農家の試行錯誤を行政も支援。雪を活用する予冷(出荷前に行う低温処理)施設(通称「ゆきむろ雪室」)を作るなど品質管理を支えた。文字通り村を挙げての事業が“日本一”の称号をもたらした。「花は嗜好品ですから、社会の変化がダイレクトに反映されます。どんな商品が求められているか考えることが重要です」と菅家さん。近年はユーカリやダウカスなど150品もの植物の栽培にも着手し、次なる一手を見据えている。
お腹も心も満たす昭和村のかあちゃん料理

山深い昭和村では日々の食事も、自給自足が基本。身の周りで採れた作物や山の恵みを上手に活用し、食卓を彩ってきた。大芦地区に暮らす皆川キヌイさんは、素朴で心のこもった郷土料理を味わえる農家民宿『とまり木』を営んでいる。

この日、食卓に並んだのは計16品。料理に使用されている野菜のほとんどが皆川さんが育てたもの。自家菜園で収穫した夏野菜は焼きナスやマリネに、昨秋に収穫し乾燥させておいたキノコは混ぜご飯や炒め物に。ゼンマイの炒め物やニシンの煮物など、会津ならではの家庭の味は、特に遠方からのお客さんに大好評だ。
「料理は母の見よう見まねで覚えました。愛情を込めないとおいしくならないから、嫌々やってはダメ」と皆川さん。一つひとつ手間をかけた、見るからに滋味深い料理を味わいたいと、全国からお客さんが詰めかける。

2014年に開業し、2020年で6年目。昭和村で募った研修を受け、「今がチャンス」と一念発起し宿を始めた。その時、皆川さんは70歳。「歳なんて単なる背番号。気にしても仕方がない」というのが皆川さんのモットーだ。

お客さんに楽しんでほしいとの思いから各種体験メニューも用意。野菜や山菜の収穫体験や、畑仕事、笹巻きや麦芽飴といった郷土料理を教えてもらうことができる。ともに作業し、昭和村の暮らしについてのさまざまな話を聞けるのも醍醐味の一つだ。
「『かあちゃん、ただいま』って何度も来てくれるリピーターさんがいるのが何よりうれしい」と皆川さん。宿泊は1泊2食付きで7,000円から。一人3,000円で食事のみの利用も可能(3名以上で要予約)。

昭和村の暮らしを未来へ。フォトアワードも開催

かつては約5,000人だった昭和村の人口も、今ではその3分の1ほど。しかし、長い間自然と関わり合いながら紡いできた暮らしは、今なお、昭和村に息づいている。
昭和村の誇る伝統的工芸品の「からむし織」もその一つだ。からむしとはイラクサ科の多年草。苧麻(ちょま)とも呼ばれ、茎から取り出した繊維をより合わせて糸にし、手織りで仕上げた布がからむし織だ。植物ならではのさらっとした手触りは夏衣として重宝され、高級品で知られる。
昭和村では1年をかけ、栽培から織りまでを一貫して行っている。その技はかつては門外不出とされ、手から手へと伝えられてきたもの。社会の変化で以前より布が売れない時代になっても、連綿と継承され今に至る。
カスミソウ栽培も日々の食事も、からむし織同様に決して一朝一夕ではない先人たちの積み重ねがあってこそ。この地に生きる人々からは、先祖から受け継いできた豊かな暮らしの知恵を未来へつなごうとする確かな決意が感じられるようだった。
昭和村では、2019年に次いで2度目のフォトコンテストになる「昭和村フォトアワード」の開催が決定。昭和村観光ビジョンのテーマでもある「これからも、昭和」をテーマに、昭和村全体を対象とした魅力あふれる1枚を募る。募集期間は2020年11月30日(月)まで。詳細は下記リンクを。
Information
- 問い合わせ先
- 昭和村観光協会
- 問い合わせ先
電話番号 - 0241-57-3700
- リンク
-
http://showavill.info/
- 備考
- 本件は令和2年度福島県地域創生総合支援事業(サポート事業)を活用しています。