この記事は、奥会津の7町村(柳津町、三島町、金山町、昭和村、只見町、南会津町、檜枝岐村)で構成する「只見川電源流域振興協議会」発行の情報誌「つなぐ奥会津」との連携記事です。
最近何かと奥会津に行くことが多く、徐々に奥会津の魅力を実感しているささちゃん。
ささちゃん「金山町、柳津町ときたから、次はどこに行こう…。雪深い地域だけど冬でも楽しめるスポット、どこかないかな?」
携帯で奥会津の観光情報を調べるささちゃん。ある施設を見つけます。
その施設は、只見町の『ただみ・モノとくらしのミュージアム』!
『ただみ・モノとくらしのミュージアム』とは…?
『ただみ・モノとくらしのミュージアム』は、約30年にわたって地元の方々に愛されてきた「会津只見考古館」を改装し、2022年7月にオープンした施設。
国指定重要有形民俗文化財「会津只見の生産用具と仕事着コレクション」2,333点を収蔵する民具収蔵庫や、福島県指定史跡「窪田遺跡」が位置する遺跡ひろばなどがあり、只見町の歴史や文化に触れることができます。
※民具収蔵庫の見学は受付への申し出が必要
ささちゃん「あ、ここ良さそう!金山町で体験した昔の生活も深掘りしたいし、通年で開館してるし、ピッタリ!」
天気予報と走行ルートを事前に確認して、準備は万全!奥会津の旅第3弾、始まり始まり~
編集部がある福島市から車で約3時間。ついに到着!
ささちゃん「着いた!只見町の『ただみ・モノとくらしのミュージアム』!」
まずは受付へ。
ささちゃん「こんにちは!只見町の歴史や文化を知りたくて来ました!特に、国の重要文化財があるという民具収蔵庫が気になるのですが、見学できますか?」
原永さん「学芸員の原永です。只見町へようこそ!民具収蔵庫の見学、もちろんOKですよ!よければ、館内をご案内します!」
ささちゃん「え!いいんですか?お言葉に甘えてぜひお願いします!」
『ただみ・モノとくらしのミュージアム』のことなら、おまかせあれの原永さんに案内してもらいます!
早速、民具収蔵庫に潜入!
ささちゃん「そもそも「民具」って何ですか?」
原永さん「地域の人々が生活の中で編み出し、使用してきたさまざまな道具のことです。農業・漁業・林業などの仕事道具から服や家具まで幅広い民具が存在します」
ささちゃん「国指定の重要文化財を見るのは初めてなのですが、珍しいものなどがあるんですか?」
原永さん「実は、貴重だから・珍しいから、という理由で指定文化財になるわけではないんです。昔の人々の暮らしぶりや生活の知恵など地域の特色を伝える歴史資料としての価値があるため、指定されました。奥会津では共通のものや、全国的に使われているものが多いのですが、名前が面白いのでぜひ注目してもらいたいです」
ささちゃん「そうなんですね。知らなかった…。面白い名前って、どんなものですか?」
原永さん「例えばこの道具は「空口(ソラックチ)」というんですが、口が空を向いているからそのように名付けられたようです。口が広く、堆肥や雑草など何でも乗せられる便利な道具なんです」
原永さん「あとは、民具の整理・記録の仕方も只見町ならではだなと思います。文化財として収集する際に、民具1つひとつに対して調査カードを記入し記録を残すのですが、専門家の方が書くのが一般的なところを、只見町では町民が全て書いています。方言や訛りによって1つの道具で呼び名が5種類つけられているものもあるんですよ」
ささちゃん「調査カードを書いた人が何と呼んでいたかで、民具の名前が変わるんですね。たしかに面白いなぁ」
人それぞれの呼び名がある只見町の民具。生活感や個性が感じられて興味深いです。
原永さんの分かりやすい説明で多種多様な民具について学んでいくささちゃん。続いて、仕事着のコーナーへ。
一度は廃れた刺し子文化について探る
原永さん「この絆纏は仕事着ではなく、地域の集まりなどの際に晴れ着として着ていたものです。只見町の旧明和村や南会津町の旧南郷村では刺し子の文化がありました。どちらも明治時代に1度廃れましたが、旧南郷村では2024年現在「南郷刺し子会」という団体が刺し子を復活させようと活動しています」
ささちゃん「一度廃れたものを復活させる…。そう簡単なことではないですが、文化を次世代に伝えるためには大切な取り組みですね」
原永さん「そうですね。例えばこの麻の葉柄は、麻の葉の成長がとても早いことから、子孫繁栄などの願いが込められている柄だと言われています」
ささちゃん「なるほど。一見何気ない柄でも、素敵な意味があるんですね」
丁寧に収蔵された民具や衣類、それらに込められた昔の人々の想いに触れることができたささちゃん。民具収蔵庫を出て、他のコーナーも周ります。
ギャラリーで民具整理のあゆみを学ぶ
民具収蔵庫から展示ホールに向かう途中にあるギャラリーで、「只見町民による民具整理のあゆみ」というパネルが気になったささちゃん。
原永さん「ここでは、只見町の民具を整理するところから国指定文化財になるまでの流れを紹介しています。民具の収集そのものは1965年から少しずつ始まりましたが、本格的な整理が始まったのは1989年でした。そこから国指定を目指して動き出したのが1998年で、2003年に指定されるまでに5年かかりました」
ささちゃん「民具整理から指定まで14年もかかったんですね!収集を始めた1965年から考えると、40年近くかかってる…」
原永さん「その後、歴史を後世にも伝えるべく、2022年にこの施設をオープンしました」
収集開始からミュージアム開館まで約60年。たくさんの人に文化伝承活動が受け継がれて、只見町の民具は「見せる収蔵」として展示されるようになったんですね。
ミニテーマ展を行っている展示ホールへ
様々な企画展が開かれる展示ホール。この日はミュージアムの職員の方がそれぞれイチオシのテーマごとに民具を紹介するミニテーマ展「民具の聖地 只見」が開かれていました。
原永さん「このコーナーでは2種類の民具を展示しています。1つは伐採した木材を山から降ろす「ヤマダシ」という作業で使われた道具たちです。ヤマゾリに木材を乗せ、カジボウで舵を取りながら山の斜面を下っていたといいます。実際にヤマダシの経験がある方に来ていただいて、使い方をマネキンで再現しました」
ささちゃん「すごい、実際の様子を忠実に再現されているんですね!」
原永さん「そうなんです。お話を聞いて面白いなと思ったのは、肩縄の掛け方ですね。斜め掛けにすると転倒時に自分も巻き込まれてしまうため、緊急事態の際、すぐ外せるよう片方の肩に掛けたと聞きました」
ささちゃん「経験者だからこそ知る話が聞けるのは貴重だし面白いですね!ちなみに、マネキンの後ろにあるのは伐採に使うノコギリですか?」
原永さん「正解です!大きな木の芯の部分を切るためのノコギリで、全長1.5mほどの大きさがあります」
刃が大きいオオノコはとても迫力がありました。使いこなしていた人たち、尊敬せずにはいられません!
原永さん「このいろりの間には、実際に町で収集した民具を設置しています。冬の時期の展示ではいろりの上にわら靴を干して乾かす様子を再現することもあるんですよ」
ささちゃん「季節ごとの変化まで丁寧に再現しているんですね!町で実際に使われていた民具で再現できるのも凄い…」
原永さんに案内していただき、只見町の民具の奥深さを存分に味わったささちゃん。
ささちゃん「只見町の魅力がたっぷり詰まったミュージアム楽しかった~!別の企画展をやる時にもまた来たいな」
奥会津の魅力にさらにハマったところで奥会津の旅第3弾は終了。案内していただいた原永さん、ありがとうございました!
今回の紹介スポットについて
ただみ・モノとくらしのミュージアム
- 住所/南会津郡只見町大倉字窪田30
- 電話番号/0241-86-2175
- 営業時間/9:30~17:00(入館は~16:30)
- 休み/毎週月曜日(祝日の場合は翌平日休み)
- 入館料/無料
- 駐車場/20台
Information
只見川電源流域振興協議会
- 電話番号
- 0241-42-7125
- リンク
-
https://okuaizu.net/