そば屋ならではの粋な酒肴に、ついつい日本酒が進む

郡山駅から徒歩10分ほど、古くからの家並みが続く道沿い。『隆仙坊』はその静かな佇まいに溶け込むように暖簾（のれん）を掲げる。

"そば名人"と呼ばれる片倉康雄氏に学んだという、この店のそばの味には定評がある。もう一つの楽しみが、ここならではの酒肴。そばとともにそれらを目当てに暖簾をくぐる人も少なくない。

寒い季節にぴったりなのが、小鍋仕立ての「どじょう鍋」。また、薄い三角形の板状のそばをわさび醤油でいただく「そば刺し」は店の商標登録品。表面はサクサク、中はとろりとやわらかく、そばがきの印象を一変させる「揚げそば掻き」。「そば田楽」「そば焼きみそ」とともに、そば切りとは違う、そばの味わい方を教えてくれる。

さらに小さな和紙に書かれたメニューには酒盗や松前漬け、カラスミなど、酒飲みにはたまらない品々が並ぶ。

酒は会津や福島県内の銘柄に加え、全国の銘酒を常時10種以上揃える。江戸っ子が好んだという、そば屋での一杯。「料理や酒を楽しみながらそばを待つ。"そば前"の酒肴はそんな意味があったのだと思います」と、生前、先代が教えてくれた。

“三たて”の極上そばは、香り、歯応え、のど越し良し

ほど良く酒と肴を楽しんだら、最後は自慢のそばでさっぱりと締めたい。厳選した玄そばを毎朝石臼で挽き、挽きたて、打ちたて、ゆでたての"三たて"の美味は、創業以来変わることがない。

おすすめは、変わりそばを一緒に盛り付けた「二色せいろ」。冬場はゆずを練りこんだゆず切りのさわやかな香りとのど越しに、そばをたぐる箸が止まらない。

そば焼きみそ、そば刺し、揚げそば掻きなどにせいろ、そば団子、抹茶が付いた「そばづくし」（4,900円）や、予算に合わせたコース料理もあるので、家族の祝い事などの集まりにもおすすめだ。