新生活に心躍るように、胃袋も小躍りしながら定食を欲する4月。
第55回の「ふくしま定食部」は、福島市街地から通称自衛隊通りを進んだ「あらい食堂」さんを目指します。
荒井地区は、県営住宅や陸上自衛隊福島駐屯地がある立地。昭和の時代から、食堂あるいは出前が浸透したエリアだったことは容易に想像がつきます。
荒井小学校を過ぎたらすぐ右手。映画のロケ地と言っても信じるほど、刻んだ歴史がひと目で伝わる外観。
看板の一部が外れていても、それさえも愛おしい景色の一部。
電話番号の先頭に“5”が無いことからも、長年の歴史がにじみ出ています。
個人的に語呂合わせで、「93-3259」を「ここさ、すっごく」(美味しいよ)と覚えています。
すっと駐車場に滑り込みますが、こちらの駐車場にはラインがありません。
人気のあらい食堂さんにあって、問題が起きないのは、協力的なお客さんが多い証拠。食堂文化を愛する者としても誇らしいですね。
ペールオレンジと橙色のストライプも華やかな、テントタイプのひさしの下、深緑の暖簾をくぐりましょう。
店内は、テーブル席と小上がり。
引き戸を開けてすぐ目に飛び込む、漆黒に白文字の手書きメニューが溜め息が出るほど美しいので、正面のテーブル席からしばらく見惚れます。
お冷をお持ちいただいたタイミングで、最近リピート中の「焼肉定食」をオーダー。
私が「あらい食堂」さん訪問するようになったのは、「かつ丼」がきっかけでした。
今から20年以上も昔、自衛隊グラウンドでサッカーの試合をすることが何度かありました。試合後は腹ペコで、自衛隊の皆さんの胃袋を満たす食堂であるならば、と入店。
ユニフォーム姿で戴いたかつ丼は、出汁の効いた、そしてしっかりめに火の入った、いわゆる“かつ丼らしいかつ丼”。
白身のえくぼに振りかけられた青のりも印象的で、以降「かつ丼」は試合とセットになったのでした。
以前から気になっていた、「野菜炒め定食」と「肉野菜炒め定食」を分けてメニューにしている理由を店主に伺うと、「先代が、当初メニューを増やすために分けたんですよ」との意外な答えが。
思わぬ理由に、なんだか温かくもうれしい気持ちになりました。
「カレーライス」と、ジャンボなかつが乗った「かつカレー」の差が150円なことについては、「先代からのサービスなので変えていないのですが、みなさん「かつカレー」の方を注文されますね!」と笑顔で話される姿に、先代の意思を継ぐ決意を垣間見ました。
本棚の「特攻の拓」を2話読んだあたりでしょうか、マヨネーズをボトルで携えた「焼肉定食」が運ばれてきました!
あらい食堂さんの焼肉定食は、甘めのタレに程よいブラックペッパー。サクッと歯が入る脂身がまた堪りません!
焼肉というより、もはやトンテキ。それが2枚の至福。
噛むほどに旨味が広がる焼肉を、ライスと味噌汁の合いの手を挟みつつ食べ進みますが、タレとマヨネーズが混然一体となったところに浸るキャベツがまた美味いこと。
添えられた冷奴も抜かりはありません。食べやすくカットされた上に、ネギにかつお節と満点。
学生時代はかつ丼の虜でしたので、定食を知らなかった当時の自分が悔やまれます…。
壁に大きく掲げられたお店のイチ推し「半ちゃんらーめんセット」も人気。
炒飯を炒める「カタタン!カタタン!」の音が、次第に「カシャン!カシャン!」となったら完成間近。
相方のラーメンも、これぞ!と言いたくなるビジュアル。水平カットのなるとも愛らしく、スープを一口すすっただけで“安心感”が染みわたります。
東京で料理人をされていた先代が、昭和51年に凱旋創業。現在は、若き二代目が暖簾を守られています。
「先代と厨房に並んだ時間があったおかげで、変わらぬ味を提供できることに感謝しているんです」と仰います。
お客さんが会計の都度、厨房の扉を開けてご挨拶される店主とお母さま。
荒井の地を冠した地域密着の食堂。いつまでも在り続けていただかないと、困るファンは多いはず。
次回は、思い出のかつ丼にします!
ごちそうさまでした。
Information
あらい食堂
- 住所
- 電話番号
- 024-593-3259
- 営業時間
- 11:00~14:00/17:00~※食材がなくなり次第終了
※夜の営業は事前に問い合わせを - 休み
- 毎週火曜日の夜、毎週水曜日
- 駐車場
- あり