『たからや食堂』は2023年11月30日をもって閉店しました。
ようやく暑さも和らいできましたね。
第73回のふくしま定食部は、秋を迎えて食欲も旺盛に、明るく元気にサニーサイドアップな目玉焼きを頂こうと、郡山市へ向かいます。
福島県民ならお馴染みの「けんしん郡山文化センター(郡山市民文化センター)」まで来たなら南裏へ。するとマンションの一角に「たからや食堂」さんが現れます。
歴史を刻み続ける趣のあるアプローチを通り、「たからや食堂」さんの濃紺の暖簾を潜ります。
入り口からすでに民芸品テーマパーク。所狭しとディスプレイされたコレクションでアジアンテイスト。まるで“たからや王国”に入国した気分です。
テレビの見えるベストポジションに陣取ったら、さっそく相席の金魚と相談しながらオーダーを決めましょう。
「たからや」さんの最大の魅力は、ほとんどのメニューに目玉焼き・納豆・ライスがセットされること。
これまで、何度もおじゃましてきましたが、野菜炒め定食に唐揚げ定食、カレーライス、月見そば…。そのいずれにも目玉・納豆・ライスがセットされていました。
逆に、目玉焼きがセットされないメニューが気になりますよね。
過去の経験から、ハムエッグ定食はさすがにセットされないのが分かっていましたので、その他について店主に伺うと、オムライスと玉子焼き定食も“付かないメニュー”でした!
それならばの逆算から、今日は「タンメン」を単品オーダーしてオートマチックにタンメン定食で頂きましょう。
昭和28年に創業し、昭和53年からは現在の場所で営業を続けられています。場所柄、コンサート前の出演者へ出前することもあるそうで、実は「たからや食堂」さんが福島県内カルチャーを陰で支えているんです。
縁起の良い店名については、店主でさえも、生前に先代から教えてもらえず、結局最後まで聞けなかったそうで、お店のみなさんも不明のミステリー。逆にそれが良いですよね。
オートマチックな定食化のきっかけは、昭和60年頃に遡ります。当時は店前の道路が駐車禁止になっておらず、タクシー運転手の方々が宿のようにお店を使っていたそうです。お腹が空いたと言う運転手のみなさんへのサービスとして、目玉焼きやライス、納豆などを付けるようになったのが始まり。
郡山市の老舗の歴史に浸っていると、「タンメン」が定食スタイルで到着です。この状態、初めてのお客さんは驚くでしょうね。
くじ棒を引くように、割り箸を抜き取る所作から、食堂の作法を遵守。
古いマニュアル車のコラムシフトを彷彿とさせる、10時方向のれんげを握り、2速に入れるように引き寄せれば、胃袋も2速へシフトチェンジ。
鶏ガラに野菜の旨みが溶け出した、絶品スープをずずずっと啜ると一気にトップギアへ。
すぐさまたっぷりの野菜を麺ごと摘まんだら、炒め野菜の香りごとグラマラスに口へ直行させます。
キャベツ・白菜・もやし・人参・豚肉。オーソドックスでありながら、コレコレという具材が入ったタンメン。
実は「タンメン」よりハイスペックな「五目タンメン」なるメニューが存在していることにお気付きでしょうか。すでに五目が入っている「タンメン」に、さらにゆで卵やピーマン、椎茸、かまぼこ、メンマが追加。
これって十目タンメンじゃないですか!
箸の周回が止められなくなる前に、一度“目玉ブレイク”です。目玉焼きをおもむろにライスに引きずり込んだら、背面には納豆。
すると、茶碗の中に郡山市を代表する風景、目玉焼き猪苗代湖に納豆磐梯山が完成。
目玉焼きに箸入れの儀を施して、黄身を割り開けば、遡ること130年前に猪苗代湖から安積原野に水を引いた「安積疎水の開さく事業」がオーバーラップ。茶碗への開拓精神が発動します。
納豆目玉丼を頬張り、タンメンスープで後追い。これ以上ない贅沢ですね。
アルコールも備えていて、通し営業のありがたい存在。
店外の神様にも挨拶したら、腹ごなしに駅まで歩いて帰ることにします!今日も満腹です。
ごちそうさまでした。
Information
たからや食堂
- 住所
- 電話番号
- 024-922-3594
- 営業時間
- 11:00~19:00
- 休み
- 毎週月曜日
- 駐車場
- 4台