第96回の「ふくしま定食部」は、ほんのり秋の気配が漂い始めたJR本宮駅前から徒歩でのスタート。


ロータリーを抜け、阿武隈川に沿って3分ほど北へ。右手にたなびく暖簾が見えたら「お食事処ふなば」さんの営業中の合図。
「みずいろのまち」と呼ばれる本宮市の歴史は水と共に。江戸時代から明治初期まで、ふなばさんの店舗裏は渡し舟が往復する「中舟場」でした。


暖簾をひらり潜ると、たっぷりの日差しが差し込む明るい店内。厨房に向き合うように陣取ったら、今度はオーダーに向き合いましょう。ふなばさんは和から洋までセットも可、豊富なメニューで自由度の高いお店。
出汁の効いた人気の「煮込みカツ丼」は、丼を満遍なく覆う玉子と細切り玉ネギ、豚ロースの食感もよく、ボリュームも含めて「当店自慢」の表記に偽りなし。

オムライスは横向きのキレンジャーの趣き。紙ナプキンで巻かれたスプーンと味噌汁のギャップにこそ食堂洋食の醍醐味があります。

今日は未食のメニューをいただこうと、カキフライ定食とあんかけもやしラーメンとで熟考。
ふと、ミニ丼セットメニューを見ると、「ミニカキフライ丼+もやしラーメン」の組み合わせがあるじゃないですか。これはふなばさんだけに渡りに船!


人気メニュー同士の最強タッグのオーダーが叶いました。蔵前国技館でブロディ・ハンセン組の入場を待ちわびるように、ラックに収蔵された漫画を読んで興奮を一旦鎮めましょう。
ページを捲るたびにグラスのビールを呷る時間もいいですね。ちょうど漫画も佳境に差し掛かった頃、青コーナーに「もやしラーメン+ミニカキフライ丼」組の入場です。

まずはスープから。中央は白く外縁は醤油ダレの琥珀色。その様はあたかも本宮のドラゴンアイ。れんげで好みの塩梅にチューニングしながらズズっと。鶏ガラベースに生姜と野菜の旨みが溶け出して。外縁のチャーシューを煮込んだ醤油ダレがおいしい。
「とろみ餡♪ won’t you stay for me♪」
もやし、キャベツ、玉ねぎ、ニンジン、ニラ。アイルランドカラーで彩られた野菜も心地よい歯ざわり。


もやしラーメンと言ってもサンマーメンとも異なる、出汁と生姜の醤油タンメンと言ったほうが伝わりやすいでしょうか。和食も扱われ、自前で出汁も取られるふなばさんらしい優しい旨みに、右腕を突き上げてブロディの雄叫び!
緩くウエーブのかかった中太麺の歯応えが、とろみを絡めた緩急を伴って口まで運んでくれます。
カキフライ丼は、カキの滋味深い風味と、アクセントの白ごまにご飯も進んで、ハンセンのテキサスロングホーン!


サクサクに揚がったカキフライにすっかり嵌って、次回はフルサイズのカキフライ定食に決定です。
お冷をぐいっと飲み干したらお会計ですね。昭和37年創業、現在は3代目ご夫妻が切り盛りされています。
出汁の効いたカツ丼も、オムライスの味も、初代店主のお婆様の味を継承。お婆様が毎日出汁を取っていたのを見てきたので、当たり前のこととして続けてきたそう。
2022年に本宮市内の飲食店が「英国風グルメ」を創作・提供を開始した際には「英国風ラーメン」を考案。これも気になっています。


2階には最大40名が入れる広間もあり、お祭りのあとの笠貫の場所としても地域ではお馴染み。
2019年の東日本台風では膝のあたりまで浸水。内装が明るいと感じたのは、このときに改装したからなのかとハッとしました。
その状況を救ったのは、店主のお子さんのハンドボール仲間とそのご家族。小さい頃から家族ぐるみでふなばさんの食事を楽しんできた思いから、お店のみならず周囲の片付けにまで奔走されたそうです。復興の根底にふなばさんが繋いだ味があったのですね。
平日はサラリーマン、休日は家族づれなどで賑わう旧奥州街道の風景の一部。江戸時代の「本宮宿」の面影が残る“うなぎの寝床”な地割り。肩を寄せるのは建物だけではなく、地域に寄り添うふなばさんの存在も同様。


公園で遊んでふなばさんでお腹いっぱいになる、本宮市の平穏な日々に寄り添い続けてくださいね。
ごちそうさまでした!
Information
お食事処ふなば
- 住所
- 電話番号
- 0243-34-2404
- 営業時間
- 11:30~14:30/17:30~19:30
- 休み
- 毎週水曜日
- 駐車場
- 約15台