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カンヌ国際映画祭パルムドール受賞!人のつながりを是枝監督が描く感動作

第十一回「万引き家族」

  • 情報掲載日:2018.05.27
  • ※最新の情報とは異なる場合があります。ご了承ください。
(C)2018フジテレビジョン ギャガ AOI Pro.
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 日本時間2018年5月16日深夜、列島を駆けめぐった「万引き家族」のカンヌ国際映画祭パルムドール受賞の吉報。是枝裕和監督がついに、名実ともに世界のマエストロ(巨匠)となった記念すべき瞬間だった。「誰も知らない」(2004)でカンヌ国際映画祭主演男優賞を主演の柳楽優弥が受賞して以来、是枝作品は毎回ヨーロッパの名だたる映画祭の注目株として、招待もしくはコンペで上映されてきた。最恵国優遇と言っていいほど是枝監督が海外、とくにヨーロッパで尊敬されるのは、彼が真正のシネアスト、いわゆる映画作家と認められているからだ。

(C)2018フジテレビジョン ギャガ AOI Pro.
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 私たちは映画監督というと一括りに考えがちだが、厳密には同じ演出家でも、映画作家(シネアスト)と映画監督(ディレクター)はニュアンスが大きく違う。シネアストは自ら全てを原案し、脚本も一から書く。少人数体制で気心の知れたスタッフと「組」を形成する。職業意識というよりは作家意識が強い。企業やメディア、広告代理店を介した大きなバジェットで動く商業プロジェクトの枠組みよりも、小規模、低予算の独立プロのような映画作りを好み、そこに本領を発揮する。

 簡単に言うと、それがシネアストなのだが、これを永続的にできる人は少ない。才能プラス運、そして信念と知見、一定の理解者が世界中にいないとできない。是枝監督は現役としては北野 武、河瀨直美、諏訪敦彦、橋口亮輔、濱口竜介などと同様、日本における希少なシネアストとして、世界中の若手の映画作家があこがれる存在として久しい。その彼が、ついに頂点を極めたことはむしろ、遅すぎると言ってもいいぐらいなのだ。「万引き家族」は是枝監督が問題意識のありったけを投入した、というにふさわしい日本の現状をナチュラルに捉えた社会派作品となっている。

(C)2018フジテレビジョン ギャガ AOI Pro.
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 東京の片隅で身を寄せ合うようにひっそりと生活している、ある一家。父親・治(リリー・フランキー)の生業は息子の祥太(城 桧吏)と万引きをすることだった。一緒に暮らす妻の信代(安藤サクラ)と信代の妹・亜紀(松岡茉優)、そして治の母・初枝(樹木希林)も彼ら同様に、軽犯罪を重ねることに何の呵責も感じない。彼らは「どうにもならない貧困が悪い、足りない生活必需品を少々、万引きでくすねたところで何の咎があるのか」とむしろ開き直っている。後ろめたさは全くなく、屈託ない暮らしを仲良く送っている始末なのだった。

 そんな時、路上で震えていたからと治が女児を連れ帰ってきた。信代はこの子をわが娘として育てることにするのだが…。

 ちょっとドギマギさせられてしまう映画タイトルだが、監督は今や日本を代表するヒューマニズムの名匠・是枝裕和。今作は彼が最も得意とするオリジナル脚本であり、市井の、それも底辺の人々に脚光を当てている点でも、是枝監督の本領が発揮されている。

 忘れ去られた子どもや貧困層の物語という点は、全く演技経験のない当時14歳の柳楽優弥を発掘し、主演に起用してカンヌ国際映画祭でセンセーションを巻き起こした「誰も知らない」(2004)に重なる。さらに、他人の子であろうと実の親と変わりない心を寄せようとする治夫婦のありようは、福山雅治主演で大ヒットした「そして父になる」(2013)の親子劇を想起させる。今作は是枝監督の過去二作を足して、二で割ったような仕上がりだ。

(C)2018フジテレビジョン ギャガ AOI Pro.
(C)2018フジテレビジョン ギャガ AOI Pro.

 是枝演出術の特徴と言っていいと思うのだが、彼の作り出す物語はメッセージ性に富み、陰影深い。そのため、それが時に重く、生真面目に偏りがちだ。ところが観れば、重しを抱え込んだかのような負担感を与えず、むしろ軽快に観れてしまうのは、演技陣のキャスティングが奏功しているからだ。今回の主演の夫婦役はリリー・フランキーと安藤サクラ。絶対的存在感のある性格俳優を起用し、善悪を超えた興味深い人間像を時にコミカルに演じている。この絶妙な俳優選択眼と演技指導の的確さこそが、是枝監督の真骨頂ではないかと毎回彼の作品を観ていて思うのである。

 後半からは物語は思わぬ方向へ急展開するのだが、経過と共に突出してくるのは、信代を演じる安藤サクラの凄みだ。これは観てのお楽しみ。「百円の恋」(2014)や「愛のむきだし」(2008)を経験済みの人なら、安藤サクラの実力は誰もが認めるはず。観る者に畏怖を与えるかのような彼女の演技。是枝監督自身も「想定外」と口にしているほどだ。これぞ俳優!と言わずにいられなくなる凄絶な演技に僕もただただ圧倒されてしまった。

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