残りの柿・万感の情景
天も地も、おしなべてひれ伏す豪雪に屈せず、残り柿は屹然(きつぜん)とその存在を鼓舞している。鮮やかな朱の輝きは白銀に映えて、ことさらに美しい。その朱柿を縫うように、豪雪の覇者の長い姿態は、傲然果敢(ごうぜんかかん)と雪を蹴散らして駆け抜けていく。
しかし今、日本の雪国のこの沁みる情景が絶滅の危機に瀕している。
害獣対策として、柿の木は行政主導で無残に伐採され、会津の木版画の巨匠・斎藤 清が愛した「残り柿」の万感胸に迫る情景は、遺憾ながら日々姿を消している。日本の山村の豊かな情景がまた一つ破壊されていく。
写真は、雪が降り積もった2020年12月中旬のもの。JR只見線・会津西方駅の駐車場隣りにある名入集会所の裏手で撮影できる。残り柿の鮮烈な朱色は、12月を過ぎるとくすんでくる。
深雪ともなると膝上まで潜るので、長靴と雪よけスパッツは必携となる。
文・写真/星 賢孝
Information
三島町・JR只見線 会津西方駅付近を走る車両
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